<検証・復興への道 第3回>定まらない中心街商業プラン

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長期の復興に揺れる店主ら

大槌の復興まちづくりに不可欠な商業の再生。その核となる中心市街地「町方」の再生に向け、大槌商工会や町役場はプランづくりを急いでいる。しかし、長期に及ぶ土地区画整理事業の盛り土や防潮堤工事に、被災商業者の考えは揺れ動いている。大震災から1年8カ月たった今も再生プランの方向性は定まっていない。

中心市街地の商業ゾーンのイメージ図(2011年12月「大槌商工会商工業復興ビジョン」から)

集約候補地、駅前から御社地に

大槌の商工業を復興する計画づくりは大震災4カ月後にして早くもスタートした。大槌商工会(菊池良一会長、335会員)が昨年7月、会員を主要メンバーとする「商工業復興ビジョン検討委員会」を立ち上げ、計5回の論議や会員の意向調査を踏まえ「進め未来へ!! 生まれ変わる大槌経済−震災前より魅力的でにぎわいのあるまちをめざして」と題するビジョンを策定した。商業再生の核となる町方についてはJR大槌駅前周辺にテナント施設を建設して店舗を集約、公共公益施設や医療福祉施設、公営住宅の誘致も提言した。

町役場はこのビジョンを受け、より具体的な「町産業復興アクションプラン(行動計画)」づくりを目指し、商工業者の意見を聞く「中心市街地復興検討会」を今年5・6月に4回開催。商業集約の候補地は、JR山田線復旧時期が不透明なこともあり、大槌駅前ではなく、大槌駅から北東約350メートル離れた史跡「御社地」周辺に変更され、買い物客が個店を回遊できるパティオ形式(中央に広場をもつ商店街)が有望視された。

町の町方地区復興計画案で「地元商店や産直売店を集約し、大槌の賑わい再生の拠点」とされる御社地周辺。土地区画整理事業で約2メートルの盛り土が計画されている。中央手前に大槌商工会プレハブ事務所

「元の場所」周辺で再開、過半数

しかし、検討会と併行して行われた商工業者の意向調査(回答165社)では、将来の営業場所として「元の場所」と「元の場所近く」を望む声が過半数を占め、町方で営業していた事業者に限っても4割を上回った。町方での商業集約の形についても、震災前と同様の「沿道型」が4割強を占め、パティオ型は2割にとどまり、検討会での議論とは違った意見が目立った。町方で中心街再生という総論ではほぼ一致したものの、各自がどう対応するかとなると意見が分かれてしまい、具体的な方向性は絞りきれなかった。

このため、町は9月、町方の商工業者らとあらためて懇談したが、①御社地周辺に公的商業施設を建設する②災害公営住宅に商店が入るテナント階を整備する③土地区画整理区域内での自主的再開など5つのメニュー提示にとどめ、あらためて意向調査を現在行っている。年度内のアクションプラン策定を目指すが、方向性を絞り切るのは難しそうだ。

「最終的には自主再建基本」

これらプラン策定に向けて開かれた中心市街地復興検討会の参加者は毎回20人台、9月の懇談会も「集まりが悪かった」(町商工労政課)といい、プラン作成への関心の低さは否めない。

菊池会長は「被災会員は(商業再建の方針が現実問題として)まだピンと来ていないのではないか。震災後から再建方針が変化しており、区画整理事業の工事が始まれば今後も変わる可能性がある」と流動的な面を指摘。「出来るだけ早く店舗を再建できる時期を示してほしい」と町に要望しつつも「最終的には(行政に頼らず)自主再建を基本にして焦らず仮設店舗で頑張るしかないだろう」と付け加えた。

異業種若手や仮設商店主ら連携

商業再生プラン作成が行き詰まる一方で、異業種の若手事業者らが連携して新商品開発など検討する議論や、仮設商店街の商店主らが「次も一緒に」と新たな商いの場を求める動きも生まれている。

国の中小企業グループ補助の獲得を目指し議論を重ねる「大槌若だんな会」(仮称)の若手商業者ら=吉里吉里

被災した中小企業がグループとして取り組む施設・設備の復旧・整備に国と岩手県が4分の3を補助する「中小企業グループ補助金」の5次公募が今月スタート。その採択を目指し、飲食店や住宅サービス、観光・交通など異業種の若手事業者らが「大槌若だんな会」(仮称)を立ち上げた。旬の地場産品を生かしたグルメ商品の共同開発・販売や機材・販路共用化を模索する週2回の議論は深夜に及ぶ。吉里吉里の石材店を津波で流された芳賀光代表(38)は「グループ補助金は欲しいが、失われた街の未来を考えるのも楽しい。それぞれの商店が少しでも早く復活していくことが大事」と訴えた。

大槌北小学校の校庭に昨年暮れオープンした仮設商店街「福幸きらり商店街」(39事業者)でクリーニング店を営む同商店街自治会副会長の佐々木嘉一さん(42)=浪板仮設団地在住=ら20人も「次も集合体で一緒にやりたい」と、観光バスも呼び込める「道の駅」のような商業施設を国道45号バイパス沿いに設けられないか今後検討していくことになった。

佐々木さんは「震災前の商店街は店が歯抜けのようになってしまい、既にじり貧状態。そのまま元の場所に戻っても厳しいし、戻るにも5年から7年はかかるだろう。理想は御社地(への集約)だろうが、待っていられるだろうか。正直なところ見えない」と話した。

商工会員87%被災、127人廃業

昨年12月策定された町の東日本大震災津波復興計画基本計画によると、商工業被害は88億6775万円とされ、産業全体の被害150億5952万円の過半を占め、基幹産業の水産業の51億2793万円を大きく上回った。

町が今年2月1日現在でまとめた最新の商工関係被害(『大槌町被災概要』所収)によると、商業関係の被害額は71億9425万円に上り、町内小売業全体の年間商品販売額約124億5000万円(2007年商業統計)の約6割に匹敵する甚大さだった。被害額の内訳は建物44億535万円、什器備品・機械設備等17億9361万円、商品・原材料製品等9億9529万円となっている。

大槌商工会によると、大震災当時の442会員に対し、その87.6%に当たる387会員が被災し、そのほとんどが全半壊で壊滅状態。被災会員のうち、5割超に当たる218会員がその後、従前の事業所や自前仮設事業所、仮設商店街などで営業を再開できたが、約3分の1に当たる127会員が廃業した。廃業会員の業種は商業58、サービス業48、工業13などとなっている。

記事=松本 裕樹