<検証・復興への道 第5回>町民バス全面見直しに期待と懸念

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料金徴収法や安全性に課題

内陸への移住を余儀なくされた仮設団地住民の利用が急増している「大槌町民バス」。仮設住民の強い要望を受けて運行方法が来月、大きく変わる。ほぼすべての仮設団地を巡るようルートを変更して増便する一方、震災後の無料措置を廃止し新たな運賃体系導入に踏み切る。仮設住民にとどまらず、町民の足として利便性の向上が期待できそうだが、方針了承から移行までわずか2カ月で、住民への周知は充分か、路面凍結が懸念される時期で安全への対応は万全なのか。さまざまな課題を抱えたまま、町民バスの運行見直しは目前に迫っている。

大きな買い物袋を抱えながら大貫台行きの町民バス金沢線に乗り込む住民ら=昨年12月23日、ショッピングセンター「マスト」前

町民バスの運行方式が来月1日、一昨年12月から約1年1カ月ぶりに大きく変わる。その方針は昨年12月5日の町地域公共交通会議(会長・高橋浩進副町長)で了承された。主な柱は①金沢線、小鎚線、臨時便(高齢者など対象)の各経路の変更②30カ所に及ぶバス停の新設・移設・改称③増便とダイヤ変更④ゾーン制の新運賃体系導入―と多方面にわたる。

同会議の席上では、町民への周知徹底や路面凍結対策を強く求める指摘をはじめ、定期券の発行や仮設商店街の賛助金などの提案が各委員から相次ぎ、多くの課題があらわになった。町民バスを担当する町総合政策課の職員は「バスの需要は高まる。(町民バス維持策を)事業者と住民も発案してほしい。賛否両論が出るだろうが、今後も皆が納得できるものにしていきたい」と、改善策を模索していく姿勢を示した。

金沢線と小鎚線の運行業務を受託している大槌地域振興(本社吉里吉里3丁目、松橋雅平社長)では昨年12月下旬、役員や運行管理者らが頭を抱えていた。「足の確保は分かるが、ダイヤが過密的で料金徴収もあり運転手の負担が大きくなる。車も人も十分でない。もう少し町と調整したかった」と不安を隠さない。

同社は津波で町民バス向け車両4台のうち2台を事務所とともに失った。その後、中古車寄贈の支援を受け計6台を運行。ただ、車体形式がまちまちで、運転手による料金の徴収や確認が難しい中乗りタイプも。震災後、運転手も増やして6人体制となっているが、配車のやりくりや料金徴収方法などに腐心している。「どうにか運行できる体制は考えている。ただ予備車がなく、急な故障があればお手上げ状態」と漏らす。「厳しい寒さの中でのスタート。(路面の凍結や雪に対する)滑り止めは町でしっかりやってほしい」と注文した。

一方、町民の新たな負担となる再有料化。震災前は一律200円だったが、震災後の11年度から国の時限補助事業を活用して無料化。同事業の13年度末打ち切りを見越しながら無料措置を廃止し、初乗り200円として300円、400円、500円の料金設定にした。一部経路が重複競合している岩手県交通の運賃も参考にしたという。

新たな金沢線を例にとると、大貫台〜赤浜の全行程を①大貫台〜細越②小又口〜征内橋③県立大槌病院前〜薬王堂前④ガード下〜赤浜の4ゾーンに分け、同一ゾーン内の乗降は200円とし、ゾーンをまたぐごとに100円アップする。このため、征内橋・県立大槌病院前間は隣同士だが、ゾーンが異なるため300円になる。

同会議の5日後、担当職員が上町のコミュニティー施設「町方ドーム」に出向いて出前講座を開いた。「便利になる代わりに運賃を頂きたい。病気の人などに対しては割引券など新たな支援制度をつくりたい」と説明。出席した仮設団地の高齢女性ら6人から「してもらうだけでなく、自分たちも何かしなくてはならない。(有料化は)仕方ないです」と話した。

出席6人のうち4人はくしくも、旧中心街から小鎚川沿いを約6キロ遡る蕨打直(わらびうちな)地区から参加。今回、仮設団地そばにバス停を設ける原則だったが、同地区周辺は狭い坂道のため、バスが乗り入れられず例外とされた。同地区の2仮設団地の住民は引き続きバス停「蕨打直」から約400メートルの坂を上らなければならない。「買い物袋を持って上がるのが大変。乗用車でもいい」と乗り入れを求める要望に担当職員は「何とかしていきたい。時間を下さい」と述べるにとどまった。同地区のほか、国道45号の吉里吉里トンネル近くの大槌第11仮設(入居14人)もバス停の設置が見送られた。

「町民バス」がようやく町民に広く浸透しつつある今、新たな公共交通体系を確立する絶好機ととらえて、町は見直しに踏み切る。しかし、新たな運賃体系の導入による影響は未知数で、運行態勢も万全とは言えない。運行方式の見直しを安易に繰り返せば利用者の混乱を招きかねず、町は丁寧な住民説明と慎重な選択を強く求められている。

※大槌町民バス
2001年度から、町の委託と補助金を受けて大槌地域振興が運行。町総合政策課のまとめによると、年間乗車人数は2010年度まで、1万8000人~2万2000人台で推移してきたが、震災後の11年度は避難所・仮設団地の巡回や無料化もあって3万1229人(対前年度比65%増)に増加。本年度はさらに増え昨年10月までに4万4625人を数え、月を追って伸びていることから年間7万8000人(同150%増)に達すると見込んでいる。

記事=松本 裕樹