<検証・復興への道 第6回>町職員の不足深刻、長時間労働も

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応援派遣確保に懸命

大震災で多くの職員を失った大槌町役場。その応援のため、兵庫から派遣されていた男性職員が正月、宿舎で自ら命を絶った。男性職員は復興事業の「最前線」に配属され、残業も長時間に及んだ。自殺の直接的原因は調査中とされているが、その背景に深刻な職員不足があったことは否めない。今年は復興事業が目に見える形で進むスケジュールとなっているが、十分な職員体制を確立できなければ、ずれ込む懸念もある。町は「心の健康」(メンタルヘルス)対策に万全を期す姿勢を示しながら、復興事業の頼みの綱となっている応援職員の確保に懸命だ。

復興事業の本格化や職員不足で長時間残業が懸念される大槌町役場

自殺職員残業80時間超

昨年10月から半年の任期で町都市整備課区画整理班に単身派遣されていた兵庫県宝塚市の技術系男性職員(45)が1月3日朝、宿舎として使っていた宮古市の仮設住宅で自殺した。室内には「皆様ありがとうございました 大槌はすばらしい町です 大槌がんばれ!!」と書き残されていたという。

男性職員は震災発生直後、宝塚市水道局の応急給水隊として大槌を支援した。今回は、土地区画整理事業などを担当し住民と直接向き合う部署に配属。夜や週末、地域ごとに開いている「復興まちづくり懇談会」に参加し、住民から住宅再建の意向を聴き取る調査も担当していた。

臨時議会の開会前、自殺した職員に1分間の黙とうを捧げる町幹部や議員ら=1月11日、町役場議場

町によると、男性職員の残業は最初の10月こそ34時間にとどまっていたが、11月は96時間に急増し、12月も84時間に上った。中央労働災害防止協会メンタルヘルス推進センターの冊子『過重労働による健康障害を防ぐために』によると、月80時間を超える残業が連続すると健康障害のリスクが高まり、面接指導が必要としている。男性職員への面談は1・2月に予定されていたという。

また、町は応援職員宿舎を町内になかなか確保できず、男性職員は宮古市津軽石地区の仮設住宅から車で片道約45分の通勤を強いられていた。町内に応援職員向けアパート40戸分が完工し入居可能となったのは自殺翌日の4日からで、男性職員も転居する予定だったという。

マンパワー不足、改善策示せず

昨年の町議会9月定例会の一般質問で阿部俊作議員は「職員は自ら被災しながらも懸命に町民の保護のため、復興のため、不眠不休で働いている。特に仮設から通勤する職員の心身の疲労は想像を絶する」と指摘。「過密長時間労働が懸念される。町民の不満の矢面に立たされ職員が心配。メンタルケアは大丈夫か」などと警鐘を発した。

平野公三総務部長は「事務量が膨大かつ長期にわたり、長時間労働になっている。マンパワー不足が要因と考えている」などと答弁。メンタルケアをめぐっては「長時間労働が健康を害し、うつ病などの精神疾患などの原因となる。派遣職員は、異なる職場環境や被災地という生活環境の中でストレスが蓄積する」などとしたが、総合的な改善策は示せなかった。

残業を減らすのは難しい

碇川町長は1月10日の年頭会見で「(職員自殺は)痛恨の極み。悲しい出来事に向き合い再発防止に万全を期したい」と、全職員を対象に心の健康対策を抜本的に見直す意向を表明。1月21日の町長会見では取り組みの柱として①労務管理の検討会設置②相談コーナー開設や個別面談、管理職セミナー開催③専門医を加えた職員衛生委員会で「心の健康づくり実施計画」(仮称)策定―を早々と発表した。

一方、4月からの必要応援職員121人に対し、1月28日現在で確保できたのは93人にとどまっていることを明らかにし「残業を減らすのは難しい」と苦渋の表情。「住民にお願いしたいこととして、アンケート調査に速やかに対応していただくことも残業を減らすことになる」と付け加えた。

応援職員向け宿舎として町が全40戸を借り上げた民間アパート。その入居開始可能日の前日、応援職員が宮古市の仮設住宅で自殺=大槌町大槌第10地割

全国からの応援職員4割占める

大槌町は震災前、行財政改革の一環として職員を2005年度171人から10年度137人に、5年で2割近くも削減。その翌年、大震災が襲い、当時136人のうち、町長や課長級7人を含め40人が犠牲となり、行政機能が一時まひ状態に陥った。このため、町は岩手県などを通じて全国の自治体に応援派遣を要請してきた。

応援職員数は今年1月4日現在、岩手県内の市町村で最多の73人となっている。また同月28日現在の町職員は地元採用132人、全国の自治体や企業などからの応援派遣78人の計210人で、応援派遣が37.1%を占めている。

復興事業の本格化に伴い、新年度からの必要職員を地元職員143人、応援派遣121人の計264人と見積もった。応援派遣の割合を45.8%に高める人員計画となっているが、全国的に公務員削減が進む中で、応援職員の確保は容易でない。

応援職員、今春に一斉交代

加えて、自治体からの応援職員の任期はほぼ3カ月、6カ月、1年単位。来月末に多くの応援職員が任期切れとなることから、応援職員の顔ぶれが大きく変わり、引き継ぎなどで復興事業が一時足踏みする可能性もある。

「うまくいっている話も振り出しに戻るのではないか」。昨年の町議会12月定例会で、この問題に質疑が集中。佐々木彰副町長は「できれば(同じ職員を)継続して派遣していただきたいと派遣元(の自治体)にもお願いに行っているが、厳しい事情があるようで、せめて引き継ぎでの配慮をお願いしている。信頼関係を築いてきた派遣職員がまた顔が変わる。住民の不安もあるだろうが、派遣元の事情もある」と理解を求めた。

碇川町長は年頭会見で復興事業本格化に向け「職員、土地、業者の確保が課題になる」と強調した。しかし、過密労働の解消を目的意識的に図らない限り、特に応援職員の確保は今後難しくなるだろう。職員不足と過密労働の悪循環に陥る危険もある。

記事=松本 裕樹